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静かなレジェンド。

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写真: 静かなレジェンド。

写真: 最後の旅立ち。

北陸本線を先導するEF81にヘッドライトが灯り、列車番号を9533に変えて、ついに出発。

短くホイッスル一声。
客車列車特有の静かな、ゆっくりとした引き出しで関西を後にするブルートレイン。
当方、流し撮りのような技量はないのでバルブ撮影の構図のまま車体の残像を記録した。
電源車カニ24 23が白帯の他はすべての寝台車が金帯。5両ともかつて「あさかぜ1・4号」で活躍した経歴を持つ「エース中のエース」で揃えられていて、まさに天理臨の、そして24系の掉尾を飾るにふさわしい編成だった。

ところで後刻聞いた話では天理〜京都間でJRから乗客に24系の運行はやはり最後となる旨、以下のような記念カードにて案内されたそう。
「皆様に愛された24系客車。
間もなく、最後の旅に出ます。
長年のご利用ありがとうございました。
思い出はいつまでも走り続けます。
2015年1月27日 天理〜京都間 9636列車」
京都の夜景を後にゆっくりと去っていく蒼い車体、車内から漏れる室内灯の明かり、これからみちのくへ戻る乗客。
その姿を眺めていると、偶然にも行きのカーラジオで聞いた竹内まりやの「静かな伝説(レジェンド)」のメロディーが頭の中で流れてきた。
「語ってくれ 彼の思い出を…」
「歌ってくれ 彼女の栄光を…」
誕生から約半世紀、栄光のブルートレインもその長い旅路の「終着駅」へ辿り着き、静かに伝説(レジェンド)の向こうに旅立とうとしている。

もう、日本各地に再び蒼い夜汽車が来ることは、多分ない。もちろん寂しさはあるけれども、このような団体列車とはいえよく今まで残ってくれたと思うとむしろ感謝の念すら覚えた。
その最後の活躍の地が中学・高校、そして社会人生活をはじめた多感な時期を過ごした奈良・大和路であったことにも偶然であろうが個人的に感ずるところが大きい。
今年の秋で僕が一番好きだったブルートレイン「彗星」が夜空の向こうに去っていって丸10年。
10年でブルートレインはおろか、日本から「夜行列車」そのものが消えようとしている。
高速化・効率化や採算性といった時代の流れから取り残された存在であることは否定しない。
ロマンや旅情、趣味的観点だけで成立しえないのも理解しているつもり。

それでも一愛好家として、かつて夜を駆け抜け、旅人とその思いを運び続けたロマンあふれる列車があったことを後世に少しでも伝えることが、語り継ぐことが出来るなら大変幸せに思う。

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2007年の秋、このアルバムをはじめるにあたって僕が書いた一節を改めてご紹介したいと思います。

「昔のように「撮影対象」に戻った蒼い特急が今夜もまた、思い出を乗せて西へと旅立ってゆく。その最後の時も僕はこうしてレンズ越しに見送るのだろう、きっと。」

行き先は西から北へと変わりましたが、その最後に立ち会え、記録出来たこと、大変幸せでした。
本当にありがとう、そしてさようならブルートレイン。
憧れと思い出を乗せた蒼い栄光の雄姿は、生涯忘れることなく僕の記憶の中を走り続けるでしょう。
ひょっとすると僕のことだからこの春以降も臨時運行を続ける「北斗星」を追って北へと撮影に赴くかも知れません。
しかしながら、自分にとっての「ブルートレイン」はこの京都駅で見送ったあの蒼い車体が最後となるでしょう。
このアルバムも一旦ここで区切りにしたいと思います。
またいつか、ここでみなさまにお目にかける写真が出来ることを祈って。

アルバム: 公開

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